政府が決定した「働き方改革実行計画」とは?

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3月28日、総理大臣官邸で「第10回働き方改革実現会議」が開催され、「働き方改革実行計画」が決定されました。

「働き方改革実現会議」とは?

働き方改革実現会議は、一億総活躍社会の実現に向けて平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」の一環として、安部総理自らが議長となり設置され、第1回が9月27日に開催されました。構成員は、安部総理をはじめ、働き方改革担当大臣、厚生労働大臣、財務大臣、経済再生担当大臣、文部科学大臣、経済産業大臣、国土交通大臣のほか、労働界と産業界のトップと有識者など(全国中小企業団体中央会会長、日本労働組合総連合会会長、日本経済団体連合会会長、大学教授、エコノミスト)です。今回が10回目の開催ということですから、半年間に10回もの話し合いが持たれたことになります。毎回の議事録も資料も、首相官邸のサイトから見ることができます。

働き方改革実行計画」の意義

働き方改革実現会議では、大きく9つの分野について、具体的な方向性を示すための議論が行われました。その中のひとつとして、同一労働同一賃金の実現に向けて、有識者の検討報告を経てガイドラインが提示され、法改正のあり方について議論がなされました。また、長時間労働の是正について上限規制等について労使合意を経たうえで、政労使による提案がなされました。それらの議論の成果がこの「働き方改革実行計画」です。

計画書の文面には並々ならぬ決意がみなぎっています。少し長いですが、文面から引用してみます。「日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革である。『働き方』は『暮らし方』そのものであり、働き方改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方そのものに手をつけていく改革である。」「改革の目指すところは、働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにすることである。」「働き方改革は、社会問題であるとともに、経済問題であり、日本経済の潜在成長力の底上げにもつながる、第三の矢・構造改革の柱となる改革である。」

また、あらためて、「世の中から『非正規』という言葉を一掃していく。そして長時間労働を自慢するかのような風潮が蔓延・常識化している現状を変えていく。」と述べられています。

同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善について

昨年12月に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示されました。実行計画では、このガイドライン案の実効性を担保するため、裁判(司法判断)で救済を受けることができるよう、その根拠を整備する法改正を行うとされています。具体的には、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正が行われる方向です。

現行制度では規定されていなかった、有期雇用労働者についての均等待遇の規定、派遣労働者についての均等待遇および均衡待遇、パートタイム労働者の均衡待遇の規定について明確化を図る改正、同じく現行制度で規定されていなかった、有期契約労働者に対する雇入れ時の、適用される待遇の内容の説明、そして、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の求めに応じ、比較対象となる労働者との待遇差の理由等についての説明義務を課せられるようになる改正等が検討されます。

罰則つき時間外労働の上限規制

もうひとつ注目されているのが、時間外労働の上限規制です。現在、時間外労働・休日労働に関する協定(=36協定)は、厚生労働大臣の限度基準告示として原則45時間以内、かつ年360時間以内と定められていますが、罰則等による強制力がないうえ、特別な事情がある場合として労使合意で「特別条項」を設けることで、実質時間外労働は青天井と言われています。

日本労働組合総連合会と日本経済団体連合会が時間外労働の上限規制に関して労使合意したことを踏まえて、原則として月45時間、かつ、年360時間を時間外労働の限度とし、特別条項をつけた場合を除いて罰則を課すことになる方向です。また、特別情報を設ける場合でも年間720時間(=月平均60時間)が上限となり、またその場合でも、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月の平均でいずれにおいても、休日労働を含んで80時間以内を満たさなければならないとし、単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならないこととされる予定です。

上限100時間という時間数について議論はあるものの、労働界と産業界が合意できたことは画期的であり、罰則付きの上限規制ができたことは労働基準法70年の歴史の中で歴史的な大改革といえます。

ただし、自動車の運転業務については、5年後に年960時間(=月平均80時間)以内、かつ将来的には一般則の適用を目指すとし、建設事業については、5年後に罰則付き上限規制の一般則を適用するとされました。また、医師については5年後を目途に規制を適用することとし、2年後を目途に規制の具体的なあり方等について結論を得ることとされました。

今後の法制化について

本実行計画の法改正を必要とするものに関しては、本年4月以降、労働政策審議会で法制化の議論に着手し、労働基準法改正案など関連法案の今国会提出を目指すとされています。法案審議は秋の臨時国会以降になる見通しで、法施行は早ければ平成31年4月になる方向です。

働き方改革は避けて通れない課題となっています。また形式だけでない根本的な改革が企業に求められています。できるところから前向きに変革していくことが必要といえるでしょう。

アイさぽーと通信<vol.65> 掲載

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