育児・介護休業法の改正内容と実務ポイント

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「改正育児・介護休業法」が10月1日より施行されております。今回は、今年1月に行われた介護休業関連を中心とした改正に引き続き、同一年での2回目の改正となります。時期的には異例の改正ではありますが、育児をしながら働く男女労働者が保育所などに入所できず離職せざるを得ない事態を防ぎ、育児休業などを取得しやすい就業環境の整備等をさらに進めていくために、いわば緊急的な対応として法整備されたものと言えます。


今回の改正内容は、その解釈に誤解が生じたり運用面で疑義が生じたりする箇所も多いように感じております。そこで今回は、育介法・均等法の改正内容を今一度確認するとともに、実務対応上の留意点等について解説していきます。

今回の主な改正点

今回の改正内容としては、主に育児休業に関連し、以下の3つについて義務化もしくは努力義務化がなされています。
(1)育児休業期間の延長(義務)
(2)育児休業制度等の個別周知(努力義務)
(3)育児目的休暇制度の新設(努力義務)

改正内容と留意点

(1)育児休業期間の延長(義務)
これまで育児休業期間の延長については、子が1歳の時点で保育所に入れない等の理由がある場合に、最長1歳6か月まで延長することができました。改正法では、1歳6か月時点でもなお保育所に入れない等の理由がある場合には、最長2歳まで育児休業期間を再延長することができるようになっています。一般的に、保育所の入所については、毎年1回、年度初めの4月であることが多いため、子が1歳6か月から2歳までの間において保育所等にも入ることができず育児休業もとることができない状況を防ぐ目的で今回義務化されたものです。
子の1歳6か月に達する日の翌日が、改正法の施行日(平成29年10月1日)以降となる労働者が対象となるため、子の誕生日が平成28年3月31日以降の場合に、最長2歳までの再延長が可能になります。
あくまで、子が2歳に達するまでの「再延長」という位置づけですので、再延長の申出は、すでに子が1歳6か月に達するまでの延長を申し出ている労働者であっても、改めて、育児休業開始予定日(1歳6か月に達する日の翌日)の2週間前までに申し出ることが必要になります。
なお、保育所に入れない等の事情につきましては、これまでの1歳6か月までの延長制度での必要な要件と同じ取り扱いになりますので、今一度ご確認しておいてください。(以下の①②いずれかの要件を満たす場合。カッコ内が今回の改正に対応する部分となります。)

①保育所等における保育の利用を希望し申込みを行っているが、1歳(又は1歳6か 月)に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
②常態として子の養育を行っている配偶者であって 1歳(又は1歳6か月)に達する日後の期間について常態として子の養育を行う予定であった者が、死亡、負傷・疾病等、離婚等により子を養育することができなくなった場合。

また、労使協定により、育児休業の対象から除外する労働者を定めている会社様も多いと思いますが、再延長の対象者についても同様に除外したい場合は、「子が1歳6か月から2歳に達するまでの育児休業の申出をする場合には、申出の日から6か月以内に雇用関係が終了することが明らかな者」を対象除外者に加えて、労使協定を結びなおすことが必要となりますのでご注意ください。
最長2歳まで育児休業を再延長が可能になったことにあわせて、雇用保険の育児休業給付金も改正されることになります。この手続きにつきましても、子が1歳6か月の時点で、改めて、ハローワークに延長申請することになります。(この手続には、保育所等における保育の利用を希望し申込みを行っているが、1歳6か月に達する日後の期間について当面その実施が行われない状態であることの証明として市町村が発行する「保育所入所不承諾通知書」等を添付する必要があります。)

(2)育児休業制度等の個別周知(努力義務)
育児介護休業に関する制度について労働者に周知させる措置を講じる努力義務は、改正前でも定められておりました。しかしながら、厚生労働者が行った育児休業制度の取得状況調査によると、育児休業を取得しなかった理由として「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」という回答が一定数あったため、育児休業希望者が、取得しづらい職場の雰囲気を理由に取得を断念することのないように、対象者に対し育児休業取得の周知・勧奨するための規定を整備する努力義務が課せられることになりました。
具体的には、労働者またはその配偶者が妊娠や出産をしたこと、または労働者が対象家族を介護していることを知った場合に、当該労働者に対し育児休業・介護休業に関する以下の①~④の事項を個別に周知することに努めることが必要となりました。

①育児休業及び介護休業中の待遇
②育児休業及び介護休業後の賃金、配置その他の労働条件
③育児休業期間及び介護休業期間の途中で休業終了事由が生じた場合の仕事の開始時期
④介護休業期間の社会保険料(本人負担分)の支払方法

(3)育児目的休暇制度の新設(努力義務)
男性の育児休業取得率が低い現状を踏まえ、特に男性の育児参加を促進させることを目的として、就学前の子を養育する労働者が育児に関する目的で利用できる休暇制度を設ける努力義務が新たに課せられました。
厚生労働者の指針では、育児目的休暇の例として、いわゆる配偶者出産休暇や、入園式、卒園式などの行事参加も含めた育児にも利用できる多目的休暇などが想定されています。また、時効により失効した年次有給休暇の積立による休暇制度の中に、「育児に関する目的」を休暇取得できる理由として追加することも、この育児目的休暇に含まれますが、労基法第39条に定める年次有給休暇自体や、育児介護休業法ですでに義務付けられている子の看護休暇や介護休暇とは別に設定する必要があることにご注意ください。
因みに、この休暇に対する賃金については特に規定されておりませんので、無給としても差し支えありません。

就業規則と労使協定の見直しを忘れずに!

今回の法改正に伴う就業規則(育児介護休業規程)と労使協定の改定部分は限られているため、つい見直しを忘れがちになる危険性があります。(特に後者は労働基準監督署への届け出が不要のため、改定漏れが起こりがちです。)すでに対応済みの会社様も多いとは思われますが、後々になり、いざ適用者が発生した段階で内容の不備や齟齬が生じることにないように今一度ご確認ください。

参考文献

・厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp

アイさぽーと通信<vol.67> 掲載

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