「ポジティブ・オフ」しませんか?~ワーク・ライフ・バランスの進め方~

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内閣府が2013年9月に実施した「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」の結果速報が12月、内閣府ホームページに公表されました。

それによると、長時間労働や有給休暇を取得することについて、上司がどういう評価をするかのイメージによって残業時間数や取得率が影響されるという相関性が見られました。

「残業をしている人」に対して、「頑張っている人」「責任感が強い人」とポジティブ評価されるイメージがあると残業は増え、反対に「仕事が遅い人」「残業代を稼ぎたい人」というようなネガティブ評価されるイメージがあると残業は少なくなっています。また、有給休暇の取得率が高い人に対して「オン・オフのメリハリがある人」「時間管理が上手な人」というポジティブイメージがあると有休取得率は高くなり、反対に、「仕事より自分の予定を優先する人」「仕事に対する貪欲さ・熱意が少ない人」というようなネガティブイメージがあると、取得率は低くなっています。

また、長時間労働の社員は、職場の雰囲気について、仕事の手順を工夫しにくい、仕事が終わっても周りの人が残っていれば退社しにくいと感じている状況も見受けられました。

ワーク・ライフ・バランスは「制度より風土が大事」と言われることがあります。制度があっても「使えない」のでは、意味がありません。意識改革、特に、トップや管理職の方々の意識改革が重要となってくると言えるでしょう。 残業削減については、「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」「担当がいなくとも他の人が仕事を代替できる体制づくり」「業務時間外会議の禁止」「部下の長時間労働を減らした上司を評価する仕組み」など、「残業削減に効果的」という理解はあるものの、実際にはあまり取り組まれていないという状況も明らかになりました。

2.「ワーク・ライフ・バランス」と「生産性向上」

労働力人口は、今後50年で3分の1が消失すると言われています。あらゆる企業で、人の確保が難しくなり、働き手が企業を選別する次代となっていくでしょう。また、2022年に団塊の世代が75歳に突入します。

75歳を過ぎると要介護となる率が急激にアップすると言われています。このとき、家族に要介護者がいる社員の割合は現在の倍、約3割に達するとも試算されています。2013年7月に総務省が発表した就業構造基本調査によると、現在、無職で介護している人は266万人。一方で、働きながら介護をしている人は290万人にも上ります。働きながら介護する人のうち、働き盛りの40代、50代の人は170万人と約6割を占め、その4割は男性。管理職として働きながら介護をする社員に限るとその8割が男性です。介護と仕事を背負い身体的・精神的に疲弊する社員が急増している現実がすでにあります。ワーク・ライフ・バランスというと、育児をする女性の問題(若い女性がいないから大丈夫)と考えている経営者も少なからず見受けられますが、管理職として活躍している40代50代の男性こそ直面している問題といえます。

企業は、労働者から企業選択してもらえるよう「働き甲斐」のある会社を指向するとともに、育児や介護をしながら働く労働者も含めて「総力戦」ができるよう、働き方を見直していく必要があります。

(株)東レ経営研究所 ダイバシティ&ワークライフバランス研究所長 渥美由喜氏は、仕事の重視・軽視、生活の重視・軽視の2軸により、従業員を4類型に分類しています。

24時間会社のために時間を費やせる「バリバリ社員」が、一見良いように見えますが、人間、そうそう長時間生産性を持続することは難しいものです。1日の生産性カーブで見た場合には、生産性が上がったり、下がったり、やっと夕方にやる気がでてくるような「偽装バリバリ(実質ダラダラ)社員」であったり、「過労バリバ
リ(うつ予備軍)社員」であったり、会社にとっては大きなリスクとなります。
「イキイキ社員」は、所定労働時間内という限られた時間内にきっちりと高い生産性をキープして終業時間を迎えてさっと帰宅するワーク・ライフ・バランスのとれた社員です。翌日も、ワークの土台であるライフでしっかりとリフレッシュした状態で出社して、また生産性の高いワークを展開できます。
ダラダラ社員は、ヌクヌク社員は、できるだけ採用しないようにしたいものですが、残念ながらヌクヌク社員はある一定程度発生するのは致し方ないと予見して、上手に活用していくことが必要でしょう。

会社と社員を輝かせる「ポジティブ・オフ」(観光庁!)

「ポジティブ・オフ」とは、オフ(休暇や勤務終了後の時間)をポジティブ(前向き)にとらえ、有意義に過ごすことにより、ワーク・ライフ・バランスの改善や休暇を楽しむ豊かなライフスタイルを実現することにより、顕在化していない旅行需要を発掘することを目的に、企業・団体で休暇を取得しやすい職場環境を整える運動です。
「ポジティブ・オフ運動」は、観光庁が提唱し、内閣府、厚生労働省、経済産業省が共同提唱して、推進しています。
日本は、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆などに観光消費の 4 割が集中しています。有給休暇取得の増加も含め休暇取得の平準化は、観光消費を増加させ、合理的な価格で、高い観光サービスを受けることにもつながるものです。当初、観光庁がワーク・ライフ・バランス推進?と、驚きましたが、観光立国を目指す日本の観
光庁としては、この説明で納得がいきます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料等によると、日本人の年間休日取得日数は 127.6 日であるのに対して、フランス人は 140.0 日、ドイツ人は 144.5 日、イギリス人は 136.6 日となっています。これは、日本では他国に比べて週休日以外の休日(祝日)が多い一方、有給休暇の取得率が 49.3%(2012 年 厚生労働省)と低いためです。(フランス、ドイツ、イギリスでは年次有給休暇取得率はほぼ 100%、アメリカでも 70 ~ 80%)
一方、日本経済新聞社の「働きやすい会社 2012」によると、「働きやすい会社」の条件として、「労働時間の適正さ」(43.48%)が最も多く、「休暇の取りやすさ」(42.26%)、「半休や時間単位など年次有給休暇の種類が充実」(32.03%)が上位となるなど、休暇は、働く人が会社を評価する際の主要な項目となっています。

ワーク・ライフ・バランスを推進すべきということはわかっているが、どこからどう手をつけたらいいのかわからないという会社は、まずポジティブ・オフ、有給休暇の活用から着手してみてはどうでしょうか。観光庁は、職場改革のカギとして三つのポイントをあげています。
(1)経営トップからの休暇の取得・活用に向けた職場改革へのコミットメント
(2)部署管理者を中心とした業務(休暇)計画の可視化
年に一度、1 週間の連続休暇取得を義務づけ、全員に “ 休暇を取らせる ”
ことを管理者の  責任として位置付け、その取得状況が管理者自身の評価に
も反映される仕組み等
(3)部署メンバーによる業務効率化アクションの実行
情報共有、効率化、合理化、マニュアル化、ダブル担当制等
全員が長期休暇を取得していくための対策を積み重ねていくことによって、常
にメンバーの誰かが欠ける状態に対応できる職場づくりへ、具体的な一歩が進
むのではないでしょうか。

参考

「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」結果速報について(内閣府)
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/research/wlb_h2511/follow-up.pdf

会社と社員を輝かせる「ポジティブ・オフ」
企業における取り組みポイント&事例集(国土交通省 観光庁)
http://www.mlit.go.jp/common/001002307.pdf

アイさぽーと通信<vol.52>掲載

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