人事労務管理のポイント:罰則付き時間外労働の上限規制

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3月28日に政府から「働き方改革実行計画」が発表された。同計画の中で、もっとも具体性があり、企業として一番気がかりなのは「罰則付き時間外労働の上限規制」ではないだろうか。実施は2年後の、平成31年4月からではないかと言われている。

時間外労働の限度(=三六協定の限度)の原則は、「月45時間、かつ、年360時間」とし、「特例」に該当する場合を除いて、違反には罰則が課される。その「特例」とは、臨時的な特別の事情がある場合に設定する、いわゆる「特別条項」に対する次の上限である。

  1. 特別条項を締結する場合でもその上限は720時間(=月平均60時間)とする。
  2. その年720時間以内において、次の上限をさらに設ける。

①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、いずれの平均も、休日を含んで80時間以内。
②単月では、休日労働を含んで100時間未満。
③特例の適用は年6回までとする。

中小企業はただでさえ人手不足であり、長時間労働が常態化していることも多いように見受けられる。特例の条件はこのような企業には相当厳しい。

さらに、自動車運送事業、建設業、医師、IT業界等、一般的に長時間労働と認識されている業界においては、いきなりこの水準にもっていくのはハードルが高すぎる。(先日拝見したある建設会社の三六協定は、特別条項ではなく、月100時間、年間1000時間で締結されていた。会社の担当者は、監督署と相談して数字を決めたと仰っていた。)業界団体も主導し、荷主や発注者の理解と協力も得ながら業界別のスケジュールを設定したうえで、労働時間の短縮に向けた取り組みを推進するロードマップが作成されている。

実行計画の中で、今後のIT業界の具体的施策について記載されている部分で、「平均残業時間1日1時間以内、テレワーカー50%以上といった数値目標をフォローアップし・・」とあった。最近ちょっと気になったテレビCMを思い出した。ある缶コーヒーの「新しい風・誰もいない編」というやつである。中間管理職の男性(堺雅人)が会議をしようとしたら、社員はテレワークや在宅勤務ばかりで、会社には誰もいなくて風が吹き抜けていく・・というものである。まさにそういう状態が、どの会社でも、特にIT業界では近いうちに当たり前の時代になるのかもしれない。

ちょうどこのコラムを書いている最中に、東本願寺が、研修施設で門徒の世話をしていた男性僧侶2人に対して未払い残業代約660万円を支払ったというネットニュースが流れてきた。なんともコメントしがたいが、そんなところでも正しい時間管理をすべきであって、そして、残念ながらできていなかったということである。働き方改革の基礎は正しい時間管理からである。ぜひこの機に乗じて、自社の時間管理について見直してみてはどうだろうか。

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