人事労務管理のポイント:未成年者と労働法

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先日、成人年齢を現在の20歳から18歳に引き下げる民法改正案が国会に提出された。成立すれば2022年4月からの施行が予定されている。すでに選挙権年齢は、公職選挙法改正により18歳に引き下がっており、2016年の衆議院選挙が、18歳以上が有権者となった初の国政選挙として注目されたのは記憶に新しいところである。

成人年齢の引き下げは、今後社会生活の様々な場面で影響を及ぼすことが想定されているが、労働基準法を中心とした労働法制への影響はどうなのかを少し確認してみよう。

 現行の労働基準法では、まず雇用できる最低年齢を定めており、満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの児童を雇用することを原則として禁止している。(例外として、労働基準監督署長の許可を受けており、かつ修学時間外であれば、①健康や福祉に有害でなく労働が軽易な非工業的事業については満13歳以上の児童を、②映画や演劇の事業については満13歳未満の児童についても、それぞれ雇用可能となっている。)

次に、18歳未満を「年少者」と呼び、労働基準法第6章に年少者に対する様々な保護・制限規定を設けている。それぞれ例外はあるが、以下の労働等については、年少者には原則禁止とされている。

①時間外労働や休日労動

②変形労働時間制やフレックスタイム制の適用

③午後10時から翌日午前5時までの深夜時間帯の労働

④安全衛生面での危険有害業務や福祉面で有害な業務

⑤坑内労働

また、こちらはあまり知られていないが、年少者を雇用した場合に、その年齢を証明する書類を事業場に備え付けなければならないことや、年少者を解雇した場合、解雇の日から14日以内に本人が帰郷するときは、会社側が必要な旅費を負担しなければならないという、いささか古色を帯びた規定も存在している。

肝心の20歳未満の「未成年」に関する規定はというと、実は少ない。それも未成年者の労働契約や賃金の請求について、未成年者といえども労働者本人が締結することが必要であり、親権者や後見人が未成年者の代理として労動契約を締結や賃金の受け取りと行うことを原則として禁じている規定なのである。つまり、親権者等の介入制限を定めているのであり、上記年少者にあるような、健康や福祉の確保のための保護規定ではない。

とすれば、定義上、18歳未満=労働基準法上の「年少者」=「未成年者」となるだけで、成人年齢の引き下げ後も大きな影響はないと考えてよいだろう。

もともと、18歳過ぎれば働く上ではもう「一人前のオトナ」という感覚が、法律上も実務上も存在しているわけだから当たり前の話ではある。

ところで、社会保険労務士法では、未成年は社会保険労務士の資格を持つことはできない。成人年齢が18歳に引き下げられると、将来18歳社労士が誕生することも考えられるが、残念ながら、学歴(原則として短大・高専以上の卒業か大学で62単位以上の取得)、実務経験(原則として3年以上)、あるいは一定の国家試験合格者(税理士や司法書士等)のうちいずれかに該当していることが社会保険労務士試験の受験資格となっているので、可能性としてはまず99.9%不可能といえる。事実、社会保険労務士試験の最年少合格記録は20歳である。そもそも海千山千の経営者や人事担当者が18歳の社労士に労務関係の指導を仰ぐ図は想像しがたいが・・・。

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